和菓子屋のせがれに生まれて
私は生まれ時から和菓子が側にありそれが当たり前で、両親は休日も仕事、長期休暇がないのも当たり前でした。そのような環境ながら思春期には全く和菓子に興味が持てず、正直イヤイヤながら手伝いをしておりました。そして、大学進学を機に外に出ましたが、そこでは目標もなくただ遊ぶ毎日。そんな日々に嫌気がさし、今思えば逃げるような気持ちで製菓学校へ通わせていただきました。そこでの経験、出会い、学びが強く今の私に影響しております。振り返ると、それからはずっと出会いに恵まれてここまで来られたように思います。
コロナ禍のなかで
松林軒豊嶋家七代目として、これまで多くのお客様と出会わせていただき、いろいろな経験を経てそこに心から感謝が芽生え始めたころにコロナ禍がやってきました。しかし、そのお陰で本当の意味で、初めて自分自身、仕事と向き合うことができ私にとってはよい気づきを得た機会となりました。
洗い出された七代目としての志
私の和菓子屋としての志はふとした日常の中に洗い出されました。ある日、私の高齢の父と、幼い娘が一つのお菓子をはさみ、同じような笑顔になっているのを見て、自分の目指すべきものはこれだと悟りました。私たちの和菓子を通じてお客様を笑顔にし、その場のみんなに喜んでもらいたい…。和菓子には、その力があると信じております。
菓子は人なり
「菓子は人なり」という言葉があります。全ての仕事に通じるとは思いますが、作った菓子にはその人柄が出ます。私の菓子は、決して派手さはごさいませんが、日本人が白米に飽きないように、食べ続けていただける菓子作りを心がけております。
私は日々の作業中、「おいしくなーれ、おいしくなーれ」と『アンパンマン』のジャムおじさんのように、心の中で唱えています。そのようにしてできた(産まれてきた)お菓子がお客様に喜んでいただけ、その温かみを感じていただけることが、私の今の何よりの幸せです。
伝統を情熱と感謝に変えて
天保3年創業の松林軒豊嶋家は、おかげさまで今年2022年で創業190年を迎えました。
代々、地元の皆様に支えられてきた松林軒の伝統を、七代目として、和菓子作りへの情熱と感謝の気持ちに変えて、日々心を込めて営業を行って参りたいと思います。
私たちは有り難いことに、お客様や取引先様、生産者様、仲間、ホームページ制作に携わっていただいた皆様、(そして何よりいつもそばで支えてくれる家族!)全てに大変恵まれております。
皆様を和菓子で笑顔にし、皆様の日常に寄り添い続ける、そんな松林軒でありたいです。